【20日の市況】Ibovespaは大幅に下落、前営業日比で1.15%安の13万7,115.83ポイント=地政学リスクや中銀引き締め姿勢が市場心理冷やす
ブラジル株式市場の代表的な株価指数であるIbovespaは21日、大幅に下落した。前営業日比で1.15%安の13万7,115.83ポイントで取引を終え、1日としては5月21日以来となる1カ月ぶりの大幅下落となった。下げ幅は1,600ポイント超に達した。週末としては0.07%の小幅な下落で終えた。
この日はブラジル中銀が政策金利Selicを年15.00%に引き上げたことや、金融政策決定会合(Copom)の声明で示された「引き締め姿勢の長期化」への懸念が市場心理を冷やした。特に金利に敏感な銀行株や消費関連株が売られたほか、資源大手ヴァーレ(Vale)の株価下落も指数を押し下げた。
Selic、15%に引き上げ 「長期据え置き」示唆で投資家に動揺
今回の利上げは0.25ポイントと市場予想通りではあったが、Copom声明の内容が市場に冷や水を浴びせた。声明では「現在の金利水準を相当長期間にわたり維持する必要がある」と明記。今後の利下げ期待は大きく後退した。
XPインベストメントスのチーフエコノミスト、カイオ・メガレ氏は「金利は当面15%にとどまり、利下げの余地は乏しい。われわれは実際の利下げが早くても来年第2四半期以降になると見ている」と指摘。「高金利環境はしばらく続き、ブラジル経済にも一定の負荷がかかり続けるだろう」と語った。
なお、Selicはこれで7会合連続の引き上げとなり、約20年ぶりの高水準に達した。
為替市場でもレアル安進行 地政学リスクも重荷
為替市場では、ブラジルレアルが対ドルで下落。ドルは前日比0.45%高の1ドル=5.525レアルとなった。将来の政策金利を反映するDI(ブラジル国債先物金利)市場はまちまちの動きとなった。
地政学リスクも投資家心理を冷え込ませた。中東情勢では、米国のドナルド・トランプ大統領が「今後2週間以内にイスラエルとイランの紛争への関与の是非を決定する」と述べるなど、緊張が高まっている。イスラエルは「イランへの攻撃を止めるつもりはない」と表明、対するイランも報復姿勢を崩していない。国連では両国が相互に非難を応酬し、欧州とイランの当局者による外交協議も行われたが、具体的な進展は見られない。
ロシアのプーチン大統領も「第3次世界大戦の可能性を憂慮している」と発言するなど、リスク回避ムードが強まっている。
ニューヨーク市場はまちまち、欧州は堅調
米国市場では主要3指数の一つ、S&P500が0.22%下落。連邦準備制度理事会(FRB)が利下げに慎重姿勢を崩さない中で、株価は方向感に欠ける展開となった。一方、欧州市場は比較的堅調だった。夏至を迎え、当地は季節的な楽観ムードも支えとなった。
銀行、消費、小売、資源株が軒並み下落 ヴァーレが大きく下げ主因に
個別銘柄では、資源大手ヴァーレ(VALE3)が前日比2.58%安と大幅に下落、3日続落となった。中国市場で鉄鉱石価格が横ばいとなる中、投資家のリスク回避姿勢が強まった。
銀行株も軒並み安。ブラジル銀行(BBAS3)が2.11%安、ブラデスコ(BBDC4)が0.84%安、イタウ・ウニバンコ(ITUB4)が0.52%安、サンタンデール・ブラジル(SANB11)も2.03%安となった。
小売株も下落。ロハス・ヘネール(LREN3)は0.85%安、マガジン・ルイザ(MGLU3)は5.35%安、アサイ(ASAI3)も2.36%下げた。
一方で、石油大手ペトロブラス(PETR4)は0.27%安にとどまった。国際原油価格の下落が重しとなったものの、下げ幅は限定的だった。石油中小株ではPRIO(PRIO3)が0.32%安、ペトロレコンカボ(RECV3)は生産再開のニュースを受けて1.35%高と上昇した。
来週はCopom議事録に注目 地政学リスクの行方も焦点
来週は25日に公表予定のCopom議事録が注目材料となる。今回の利上げの背景や、今後の金融政策運営方針についての市場の手がかりが期待される。
また、グローバルでは週明け24日に各国の購買担当者景気指数(PMI)が発表される予定。ただ、依然として市場の最大の関心事は中東情勢であり、戦火の行方次第では、投資家心理がさらに冷え込む恐れがある。
週末ではあるが、投資家たちにとっては、決して楽観できない状況が続きそうだ。