【23日の市況】Ibovespaは続落、終値は前週末比0.41%安の13万6,550.5ポイント=
週明け23日のブラジル株式市場は、原油価格の急落を受けて石油大手ペトロブラス株が売られ、主要株価指数であるIbovespa(イボベスパ指数)は続落した。終値は前週末比0.41%安の13万6,550.5ポイントとなった。取引時間中の安値は13万5,835.25ポイント、高値は13万7,130.13ポイントで、1日の値幅は1,295ポイントに及んだ。出来高は204億8,000万レアルに達した。
週末に米国がイランの核関連施設に対して軍事攻撃を実施したものの、中東地域の原油供給に影響が出なかったことが、市場のリスク回避姿勢を和らげた。一方で、原油価格は大きく下落。北海ブレント原油の先物価格は一時7.18%安の1バレル=71.48ドルと、前週末比で大幅に値を下げた。
米国のトランプ大統領は、SNS「トゥルース・ソーシャル」で「米国はイランの主要核施設を『壊滅』させた」と発表。これに対しイランは報復措置として、カタールにある米軍基地に向けてミサイルを発射した。トランプ氏は「イランは攻撃前に事前通告してきたため、米側には死傷者は出なかった」とも述べ、被害の最小化を強調した。
地政学リスクの高まりにもかかわらず、世界の原油供給の約20%が通過する戦略的要衝であるホルムズ海峡で、タンカー輸送が遮断される事態には至らなかったことが、原油市場に一定の安心感をもたらした。
米国株式市場では、S&P500種株価指数が0.96%高と堅調だった。米10年物国債利回りも4.3397%に低下し、前週末の4.375%からやや水準を下げた。
ノマド証券のチーフストラテジスト、パウラ・ゾグビ氏は「市場はイランの報復が石油インフラを直接的な標的としなかったことを受けて、エネルギー供給への深刻な脅威が後退したと評価している」との見方を示した。
さらに、米連邦準備理事会(FRB)のボウマン副議長が「利下げのタイミングが近づきつつある」との見解を示したことも、投資家心理を支えた。
ブラジル国内市場では、先週のブラジル中央銀行(BC)の金融政策決定会合で、政策金利「Selic」が15%に引き上げられたことを受け、引き続き金利動向への警戒感が残っている。24日にはその会合の議事要旨(アタ)が公表され、今後の政策スタンスに関する手掛かりが注目される。
ブラジル中銀が同日発表した「フォーカス調査」によると、2025年末時点でのSelic予想は14.75%から15%に上方修正された。2026年については12.5%の見通しが21週連続で据え置かれた。
ペトロブラスが大幅安、銀行株も軟調 Valeが下支えに
この日の市場では、ペトロブラス(PETR4)が2.5%下落し、イボベスパ指数の下落要因となった。国際原油価格に敏感な同社株は、原油急落の影響を受けた。他の石油関連銘柄も軟調で、石油開発中堅のPRIO(PRIO3)は0.71%安で取引を終えた。
銀行株も売りが優勢で、ブラデスコ(BBDC4)が0.78%安、イタウ・ウニバンコ(ITUB4)が0.22%安、サンタンデール(SANB11)は1.19%安、ブラジル銀行(BBAS3)は1.22%下落した。
一方で、鉄鉱石価格の上昇を背景に、資源大手Vale(VALE3)が1.26%高となり、指数の下支え要因となった。小売セクターも一部銘柄が堅調で、マガジンルイザ(MGLU3)が0.68%、ペッツ(PETZ3)が0.75%上昇した。
食品関連では、マルフリグ(MRFG3)が4.76%高、BRF(BRFS3)が4.29%高と大幅に上昇。両社の経営統合計画を巡る株主総会が7月に再開される見通しとなっていることが材料視された。
外交リスクとインフレ懸念が交錯 為替はレアル高に
地政学的リスクの高まりにもかかわらず、為替市場ではブラジルレアルが堅調に推移した。対ドルでは0.4%高の1ドル=5.503レアルで終了した。金利先物市場では方向感に欠ける展開となり、終日もみ合いが続いた。
米国市場では、FRBによる早期利下げ観測が強まり、株式市場にはプラス材料となったものの、欧州市場では地政学リスクによる景気後退懸念が上値を抑えた。欧州中央銀行(ECB)のクリスティーヌ・ラガルド総裁は、世界的な貿易摩擦や地政学リスクの高まりがユーロ圏の成長鈍化につながる恐れがあると警告した。
XPインベストメントのチーフエコノミスト、カイオ・メガレ氏は「最大の経済リスクはインフレであり、中東は世界の主要な原油供給地域であることから、エネルギー価格の変動が世界のインフレ率に波及するリスクは大きい」と指摘した。
ブラジル財務省のダリオ・ドゥリガン事務局長も、「石油価格は今後上昇する可能性があり、ペトロブラスの価格政策などの緩和策が歓迎される」と述べ、政府としても価格動向を注視する姿勢を示した。
地政学的リスクが引き続き市場を左右 注目は中銀議事要旨と中東情勢
市場関係者の関心は、24日に公表予定の中銀議事要旨に加え、引き続き中東情勢に向けられている。ロシア、米国、イラン、そして中東の他のプレーヤーが今後どのように動くのか、予断を許さない状況が続く。
ブラジル市場にとっても、グローバルなリスク要因と国内の金融政策の行方が複雑に絡み合う展開が続きそうだ。