【24日の市況】Ibovespaは前日比0.45%高の13万7,164.61ポイント レアルは0.29%下落して1ドル=5.519レアル Selic引き上げ打ち止め
24日のブラジル株式市場は4営業日ぶりに反発し、代表的な株価指数であるIbovespaは前日比0.45%高の13万7,164.61ポイントで取引を終えた。前日までの連敗を脱し、終盤には一時13万8,000ポイント台を回復する場面もあった。
一方、為替市場ではドルが再び買われ、ブラジルレアルは対ドルで0.29%下落し、1ドル=5.519レアルで引けた。債券市場では中長期の金利(DI)が低下し、利回り曲線全体で下げが目立った。
■Selic引き上げ打ち止め、景気の鈍化が背景に
今回の株価反発の背景には、ブラジル中銀が発表した金融政策委員会(Copom)の議事要旨がある。前週、政策金利であるSelicを年15%へと引き上げたばかりだが、議事録では「この水準を長期間維持する」との表現が5回も繰り返された。これにより市場は「利上げサイクルが終わった」との見方を強めている。
XPインベストメントの分析では、ブラジル中銀は景気とインフレの鈍化傾向を確認し、外部環境が依然として厳しい中、現行の高金利政策の効果を見極める段階に入ったとされる。ただ、政府が検討する財政改革や減税見直しは、将来的に金利動向に影響を与える可能性もある。
■中東情勢に緩和の兆し、原油価格は続落
国際情勢も市場心理を支えた。イランとイスラエル間の軍事衝突を巡っては、トランプ米大統領が「停戦」を発表。実際には一部地域で戦闘が続いているものの、外交的な落ち着きを受けて原油価格は大きく下落した。前日比で7%安に続き、この日も6%近い下落となった。
この原油安により、欧米の株式市場は全面高となった。米国では主要3指数がそろって大幅に上昇。欧州市場も地政学的リスクの後退を好感し、広範な買いが入った。
■FRB議長、利下げに慎重姿勢
ただし、楽観一色ではない。米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長は24日、米下院の公聴会で「利下げを急ぐ必要はない」と発言。バイデン政権による関税措置の影響もあり、利下げ時期の見通しを示すことは避けた。
パウエル議長の慎重姿勢に対し、トランプ氏はSNS上で「愚かで頑固だ」と批判。中東情勢を巡る影響についても「現時点で経済的影響を語るのは時期尚早」とする発言があった。
市場では、7月の利下げ期待がやや後退している。加えて、6月の米消費者信頼感指数が低下したことも、先行き不透明感を強めている。
■国内消費関連株が上昇 利上げ打ち止めで物色
ブラジル市場では、利上げ打ち止めの見方から、国内経済に敏感な銘柄への物色が広がった。XPは「金利低下が視野に入る中、国内株、特に中小型株への投資意欲が高まっている」と分析する。
この日は、バスメーカーのマルコポーロ(POMO4)が0.13%安、運輸大手ランドンコープ(RAPT4)は0.23%高と小動きだったものの、銀行株や小売株が軒並み上昇した。
銀行大手では、バンコ・ド・ブラジル(BBAS3)が1.66%高、イタウ・ウニバンコ(ITUB4)が1.89%高、サンタンデール(SANB11)も1.82%高と堅調。証券取引所運営のB3(B3SA3)も1.36%上昇した。
小売では、マガジン・ルイザ(MGLU3)が2.13%高、ロハス・ヘネール(LREN3)が1.47%高、現地スーパーチェーンのアサイ(ASAI3)も1.67%高と、いずれも買い優勢だった。
一方で、鉱山大手ヴァーレ(VALE3)は0.02%安と冴えず、原油価格の下落を受けて、国営石油大手ペトロブラス(PETR4)は1.97%下落した。中小の石油関連銘柄も売られ、ブラヴァ(BRAV3)は6.90%安、PRIO(PRIO3)も3.91%安と大幅安。
そのほか、電力会社コペウ(CPLE6)は企業統治の最高区分「ノーヴォ・メルカド」へ移行したことが材料となり、0.40%上昇。サトウキビ大手のサンマルチーニョ(SMTO3)は四半期純利益が8割減となったことを嫌気し、2.47%下落した。
■富裕層14万人が国外移住へ、ブラジルも「送り出し国」に
同日、英系のコンサルティング会社ヘンリー&パートナーズは、2025年に世界で14万2,000人の富裕層が自国を離れ、他国へ移住するとの推計を発表した。これは過去最大の数値で、富裕層の「地理的再配置」が加速していることを示す。
最も多くの富裕層を失うと見られるのは英国(1万6,500人)、次いで中国(7,800人)、インド(3,500人)、韓国(2,400人)、ロシア(1,500人)、ブラジル(1,200人)と続く。ブラジルの富裕層の主な移住先は米国、ポルトガル、中米やカリブ海のタックスヘイブンだ。
一方、最も富裕層を引き付けているのはUAE(9,800人)、米国(7,500人)、イタリア(3,600人)、スイス(3,000人)、サウジアラビア(2,400人)となっており、政治的安定や低税制、投資移民制度(いわゆる「ゴールデンビザ」)などが人気の要因とされる。
■ペトロブラス、配当への懸念再燃 原油安と高水準の投資計画が重荷に
原油価格の乱高下を背景に、ペトロブラスの今後の配当動向への関心が高まっている。短期的には中東情勢の緊張が原油価格の下支え要因となるが、中長期的には供給過剰リスクも意識される。
OPECプラスは増産方針を継続しており、国際エネルギー機関(IEA)も2025年後半には日量160万~180万バレルの供給超過が発生する可能性を指摘している。
加えて、ペトロブラス自身の内部要因もある。健全な財務体質を維持しているものの、2024〜2028年の設備投資計画は1,020億ドルと巨額に上る。これにより、将来のキャッシュフローや株主還元に対する懸念が浮上している。
投資会社L4キャピタルのフーゴ・ケイロス氏は「ペトロブラスは現状では耐性があるが、過去のように設備投資偏重・燃料価格抑制・財務レバレッジ拡大が続けば、2010〜2014年のような厳しい局面もあり得る」と警鐘を鳴らしている。
■「タカ派」でも株高、小型株に資金流入
最後に、足元の相場で注目されるのが「タカ派的な政策姿勢」と株高の共存現象だ。Copomが金利を当面高水準に据え置く方針を強調したにもかかわらず、投資家はすでに「利上げ打ち止め=買い材料」と解釈している。
特に、長期金利の低下や割安なバリュエーション、外国人投資家の買いなどが重なり、小型株(スモールキャップ)を中心に上昇が目立つ。中でも、旅行会社CVC(CVCB3)、マガジン・ルイザ(MGLU3)、レンタル事業のVamos(VAMO3)、メディア・フィンテック関連のMéliuz(CASH3)などはこの数日で10〜20%上昇した。
年初来では、小型株指数SMLLが約22%高となっており、Ibovespa(約10%高)を大きく上回っている。教育関連株のCogna(COGN3)やÂnima(ANIM3)、Ser Educacional(SEER3)なども年初来で2倍以上に値を上げている。
今後の市場の主役は再びFRBと中東情勢。25日にはパウエル議長が米上院で再び証言予定で、市場はその発言内容に神経を尖らせている。戦争映画の幕引きが本物か、それとも続編があるのか、投資家の視線はスクリーンに釘付けだ。