ボルソナロを亡霊のように苦しめる動画

大統領選のキャンペーンが本格的にはじまった。いつもの大統領選なら、対立候補をやり込めるどぎつい批判宣伝が行われるが、今回は「フェイクニュース」がことさら問題視されるようになったことから、そうした言動はかなり控え目となっている。対立候補を貶めた際に、それが嘘の情報と判明した場合、発言者側は責任を強く負わなくてはならなくなった。
そんな中、アンドレ・ジャノーネス下議が、ボルソナロ大統領に対するかなり厳しい内容の批判動画を積極的に拡散している。
動画は1998年12月に起こったセシ・クーニャ下議とその親族3人の殺害事件についてのものだ。セシ氏らの殺害を命じたのはタウバーネ・アルブケルケ氏。同氏はセシ氏の死によって下議への補欠当選を果たしていた。99年4月、下院でタウバーネ氏の罷免審議が行われたが、この時、タウバーネ氏を擁護する演説を行ったのが若き日のボルソナロ下議だった。
ボルソナロ氏がタウバーネ氏を擁護する映像はこれまで忘れられていた。しかし、それが今「女性下議殺害犯を擁護するボルソナロ」とのイメージのもと拡散を続けている。タウバーネ氏は実際に殺害犯として実刑に服しており、演説映像も本物なので、フェイクニュースになりようもない。
8月28日、バンデイランテス局での大統領候補者テレビ討論会で、ボルソナロ氏は、かねてから対立していた女性ジャーナリスト、ヴェラ・マガリャンエス氏と口論になり、取り乱した様子で「おまえなどジャーナリストの恥だ」と暴言を吐いた。
これに女性候補たちが反発し、シモーネ・テベテ候補が大統領に「なぜいつも女性に対してこのように敵意をむき出しにするのか」と詰め寄り、「あなたはセシ・クーニャ氏が殺されたときもそうだった」と発言した。
テベテ氏のこの発言により、拡散中の演説動画がさらに注目を浴びることとなってしまった。投票日までの約5週間、この動画はことあるごとに取りざたされることになりそうだ。
ボルソナロ氏はこの後にも、不動産の不審な現金購入疑惑などが相次いでいる。果たしてこれらの攻撃から逃れきることはできるのか。(陽)