「ファン相手」の政治の限界

「ボルソナロ大統領派が軍事クーデターを起こすのでは」との憶測が流れた独立200周年記念日の7日は結局、何も起こらずに終わった。
大統領は全国的な『愛国』デモの開催を呼びかけたが、「軍政を復帰させろ」「最高裁を閉鎖しろ」との威勢のいい言葉を吐く者は現れるものの、実行に移す者は出てこなかった。
大統領自身が参加したプラナウト宮前での集会でさえ、参加者の数は多くなかった。ネット上では、反ボルソナロ派が「フロポウ(失敗した)」とからかい、それを「いや、そんなことないぞ。こんなにたくさん居るぞ」と大統領派が必死になって反論している。大統領派の反論には、最高裁などの現体制を攻撃する大統領の主張の正当性を示すものよりも「大統領にはこれだけの味方がついているんだぞ」という旨の主張が多い。
大統領は最高裁を敵視し、独裁者風の口を叩いてはいるが、本当に攻撃しようとしているようには見えない。むしろ「権力と戦うかっこいい俺を見てくれ」とアピールしているように見える。
似ているものがあるとすれば、カリスマ・プロレスラーの興行か。人気のレスラーが試合後に行う涙を流さんばかりのマイク・パフォーマンスに男性ファンが胸を熱くし、「俺は兄貴にずっとついていくぜ」などと叫んでしまうような光景があるが、ボルソナロ氏の支持者の相手の仕方はそれによく似ている。
全国デモは大規模な「ファンの集い」なのかとつい呆れてしまった。
本人もファンも互いに自己に酔いしれている感じだが、その輪がファンの間だけで完全に自己完結してしまっている。これでは「巨大なファンダム(ファン集団)」は出来上がるかもしれないが、国民全体を相手にした政治は非常に難しい。
アウシリオ・ブラジルの支給額増加や、市場の流れを無視した強引なガソリン代値下げを試みたボルソナロ氏の支持率が伸びないこともここにつながっているように、コラム子には思える。
「独立記念日を巨大なファン感謝デーにしかできないようでは苦しいな」とコラム子には映ったが、この先どうなる?(陽)