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統一選、最大の敗者はPSDB

2022年10月7日

ボルソドリアを展開したドリア氏(facebook)
ボルソドリアを展開したドリア氏(facebook)

 今回の統一選挙では、どうしてもルーラ氏とボルソナロ氏の対決の趨勢にばかり目が行ってしまうが、「最大の敗者」は間違い無く、PSDB(民主社会党)だ。
 PSDBは、本来であれば統一選挙で主役争いをしていなければならない格の政党だ。1994、98年にはカルドーゾ氏を大統領とし、2002年から14年にかけては4期連続で大統領選の次点。サンパウロ州に限っていえば、94〜18年まで7期連続で知事を選出してきた。
 ところが今回の選挙では党から大統領候補さえ出せず、サンパウロ州知事選では一次投票で脱落。下院議員に至っては屈辱の13人。98年には99人を数え、どんなときでも50人はいた下議がそこまで減ったのだ。全体でも10位で、政界での影響力もすっかり小さなものとなった。
 なぜこのようなことになってしまったのか。理由は様々に考えられるが、新たな時代の潮流に対しての対応の失敗、そしてそこに起因する党のアイデンティティの喪失が大きいだろう。
 凋落の起こりは2017年、14年に大統領候補だったアエシオ・ネーヴェス氏が収賄スキャンダルで失脚し、そこにボルソナロ氏が極右政治家として台頭してきた。ここで「保守派の牽引者」としての役割を奪われてしまった。
 この時、「軍政と戦った政党として軍礼賛の政治は許さん」との態度を毅然と示せれば保守派としての存在感を保てたのだろうが、2018年のサンパウロ州知事選でジョアン・ドリア氏がボルソナロ氏と協力関係(通称:ボルソドリア)を結んだことによって、その目も潰えてしまった。
 ボルソドリアによってドリア氏は、結果的に大統領選に出馬していた恩師ジェラウド・アウキミン氏を裏切ってしまうことになる。コラム子は、ボルソナロ氏と組んだこと自体よりも、仲間を裏切ることの方が問題だとがっかりしたことを覚えている。それと同時に嫌な予感も覚えていた。
 その勘はどうやら正しかった。ドリア氏は知事就任後、すぐにボルソナロ大統領と袂を分かった。そして、ボルソナロ派からは嫌われ、反ボルソナロ派からは相手にされなくなった。ドリア氏に対する冷ややかな空気は、昨年11月の党内大統領候補選に勝ってさえも続き、結局、候補は辞退した。党復活のため、巨額をかけて行われた党内選挙が台なしになってしまった。
 悪いことは重なった。当創設者の孫、ブルーノ・コーヴァスサンパウロ市市長の病死、アウキミン氏の離党。そして2度の大統領候補となったジョゼ・セーラ氏の下議選落選。元気だった長老カルドーゾ氏も90歳を超え、公の場に現れなくなっている。党の古株が伝統にこだわる中、比較的若い党員が極右路線になびいている。
 落ちるところまで落ち、世代も替わってきている。再建の良いタイミングだとも思うが、次のステップを誤らないことを祈るばかりだ。(陽)


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