《記者コラム》女性CEOからの解放願う=問題発言の男性CEO更迭

18~21日、男性至上主義の経営責任者(CEO)が、「神よ、私を女性CEOから開放してください」(Deus me livre de mulher CEO)という発言を行い、散々突き上げられた後、辞任(一部報道では更迭)。後任CEOには女性が就任予定と報じられた。
19日付エスタード紙など(1)(2)(3)によると、問題発言を行ったのは、G4エドゥカソンというビジネススクールの創始者の一人でEasy Taxiなども創設した企業家のタリス・ゴメス氏だ。
同氏は18日、インスタグラムのフォロワーから女性CEOとの関係について訊かれ、女性のエネルギーは家庭を築き、家族の基礎となるために使われるべきで、女性CEOはエネルギーの使い方を間違っていると指摘。フェミニスト運動が始まり、女性が男性の役割を果たすようになってから世界は崩壊に向かっているという内容の発言を行い、女性CEOは男性化の過程にあり、家庭は第4プランに過ぎないと語ったという。
これに対し、女性弁護士や女性企業家も参加するワッツアップグループで大反発が起き、G4の元学生達もSNS上で、「同社の講座料金を払ったことを後悔している」などと投稿したことから、19日に新たな投稿を行い、「自分が望む女性像を語り、大変な間違いを犯した」と謝罪した。G4も、ゴメス氏は間違いを犯したとして、「彼の投稿はG4の意見や立場を代表したものではない」とする声明を出した。
ゴメス氏の発言に抗議の声をあげた女性にはマガジン・ルイーザの経営審議会議長のルイーザ・エレナ・トラジャノ氏らも含まれており、Band局のラジオの女性コメンテーターも「非常に愚かな発言で、多くの間違いがある」と酷評した(20日付エスタード紙など(5)(6)参照)。
このような動きを受けて、G4は21日にゴメス氏がCEOと経営審議会議長を辞任したと発表。G4は、今後も影響力のある幹部教育に取り組むことと、女性のリーダーシップは常に顕著であったことを明らかにすると共に、後任には、10年以上同業界でリーダーシップを発揮し、大手企業や同社の運営にも携わってきたマリア・イザベル・アントニニ財務理事が就任することも発表した(21日付エスタード紙(7)参照)。
男女同権や、人は皆平等といった表現が使われ始めてから久しいが、出産のように女性にしか果たせない役割があること以外は各人の能力、適性の問題であること、女性が男性並みの役職に就くには男性の何倍もの努力を重ねる必要があることを認められない人はまだ多い。
24日付G1サイトは、ゴメス氏の性差別的な発言後に聞いた、女性CEOの夫達の「お互いの憧れ」「料理するのは自分」といった声を掲載し、互いの役割に対する理解や考えが変わってきていることも示した。
ブラジルに来て間もなく住んだアパートの地階にあった店の奥さんは、「男はいつも、自分が正しいと思っている」とぼやいていたが、妻や周囲の人の意見を聞き、社会の動きに対応する柔軟性も持たないと、自分が設立した会社のCEOの座からさえ墜落することをゴメス氏の例は示している。日本には「女性は天の半分を支えている」という表現や「口は禍のもと」という諺がある。大器晩成する人は妻などの声を聞くことができるという内容の本があったことも思い出させる出来事だった。(み)
(1)https://www.estadao.com.br/economia/tallis-gomes-ceo-mulher/ 19日
(2)https://www.estadao.com.br/economia/quem-e-tallis-gomes/ 19日