《記者コラム》あの感動と一体感戻る=盛況だった橘和音楽祭

26日、サンパウロ市東部のヴィラ・カロン文化体育協会(ACREC)で、第9回橘和音楽祭が開催された。従来の音楽祭は5月1日に静岡県人会館で開催されていたが、パンデミックで中断後に再開した第8回が昨年1月にACRECで開催されて盛況だったため、今回も同じ時期に同じ会場で開催されることになった。
第8回と同じだったのは、時期や会場だけではない。否、前回にも増して感じられたのは、レベルの高い橘和バンドの演奏と歌手達の歌やダンス、陰ひなたなく支える奉仕者達が生みだした感動であり、一体感だ。
長年、音楽活動に携わり、カラオケ大会の審査員も務める橘和保江氏がマンドリンを弾き、若い頃、バンドで共に演奏していて結婚したオズワルド氏が今も保江氏の横でギターを奏でる。母の胎内にいる時から音楽を聴きながら育った子供達も、音楽を専攻した長女の桑原早苗氏が編曲を行い、夫のセルジオ氏と共にキーボードを担当するなど、伴侶や孫に至るまで、家族全員がバンドの活動に加わり、支えている。こんなバンドだから、その一体感は抜群だし、歌手達が使い慣れたカラオケに近い演奏をと配慮する優しさや、歌手が少々タイミングを外しても即座にあわせる力量もあり、気持ちよく歌わせてくれる。
プログラムに記載された106組の歌手とキーボード演奏を披露した人達は、橘和音楽教室の生徒や橘和バンドと歌いたいと望んで集まった人達だから、ここでも当然、一体感が生まれるが、音楽がその一体感をさらに高めてくれているのを体感した人も大勢いたはずだ。通常のカラオケ大会では見られない夫婦や友人同士のデュエット、女装の男性ダンサーも登場するランバーダ、歌に合わせて踊るグループの特別参加なども、音楽祭ならではの感動や一体感を高めてくれた。
審査員の顔色をうかがう必要もなく、好きな曲を思い切り歌った後の心地良さや、歌や音楽が好きだから集まった人同士の交わりが生む楽しさ、喜びは言うまでもない。歌を楽しみ、音を楽しみ、人との出会いや和を楽しむ、音楽を軸にしたフェスタ(祭り)で暮れた1日は、皆に「また来年も」という思いを抱かせた。
歌いたくても人数が増えすぎて出演できなかった人や、友人や親戚がいるからという人も集い来て、共に一時を過ごし、笑顔で帰っていける場所。橘和音楽教室のイベントは常に、橘和ファミリーの和と輪の広がりを感じさせる。会場の至る所に生まれていた人の輪や、共に歌い、踊った体験は新たな広がりを生んだことだろう。
より良い状態で参加者や来客を迎えたいという思いは、入り口で人々を迎えてくれた花や合間合間に手にするカフェやランシ(軽食)、抽選用の賞品の山などにも表れた。
心も体も満たされて会場を後にした人達の心の中に、さわやかなメロディー、豊かなハーモニーがいつまでも残ることを願いつつ。(み)