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《記者コラム》オスカー本命に大スキャンダル!=逆転受賞なるか「アインダ~」

2025年2月14日

エミリア・ペレスのポスター(公式)
エミリア・ペレスのポスター(公式)

 「アインダ・エストウ・アキ」のオスカー(アカデミー賞)3部門ノミネートにブラジルが沸いてから3週間。その授賞式が3月2日(米国時間)に行われる。「アインダ〜」がノミネートされた3部門には最多ノミネート作品「エミリア・ペレス」も選出されており、分が悪いのではないかとの声があがっていたが、事態は思わぬ方向に展開し、話題となっている。

 一つは「エミリア・ペレス」の内容が物議を醸していることだ。この映画のあらすじは、メキシコの麻薬王が有能女性弁護士の助けを借りながら女性に性転換。それを機にメキシコで多発している麻薬売買に伴う行方不明者の遺体を家族に返す事業を始め、縁遠くなっていた実娘との再会を求める、というもの。部分的にはミュージカル仕立てだ。
 かなり独創的な内容だが、問題となっているのは、この作品を手掛けたのがメキシコ人監督ではなく、フランス人の白人監督だという点だ。分かりやすく言えば日本のヤクザ犯罪について韓国や中国の監督が誇張して描いたようなもの。それがメキシコをはじめ中南米系の人の神経を逆なでし、苦情が相次いだのだ。
 これに加え、本作の主演女優カルラ・ソフィア・ガスコンにスキャンダルが浮上した。彼女がツイッター(現X)で以前に差別的な発言を繰り返し行ってきたことが判明したのだ。曰く、「娘の学校に髪を隠した女性が増えた。英語の代わりにアラビア語を学ぶのか」「黒人と女性はキッチンに隠れていろ」「ヒトラーがユダヤ人をどう扱おうと彼の自由だ」など。こうした発言が、トランスジェンダーでありながら初めてオスカーにノミネートされた彼女の価値を下げてしまった。
 加えて彼女は、同じく主演女優賞にノミネートされている「アインダ〜」主演のフェルナンダ・トーレスに対し「彼女の映画のスタッフが私への中傷を呼びかけている」と証拠のない主張を展開していた。これによりカルラは「エミリア・ペレス」のキャンペーン活動から外されてしまった。
 この騒動で、米国のメディアでも「アインダ〜がエミリア・ペレスに国際長編映画部門で勝つのではないか」「フェルナンダが主演女優賞を取れるのでは」と予想する声が出てきている。
 だが、どうだろう。スキャンダルで評判を下げたとはいえ、「エミリア・ペレス」はそもそも13部門にもノミネートされたほどの作品。作品に対する評価が果たしてそんなにもすぐ変わるだろうか。「アインダ〜」は応援したいが、追いつけるかどうかコラム子には疑問だ。
 また、最大賞の作品賞に関して言えば、重要前哨戦と目される他の映画賞で「エミリア・ペレス」は負け始め、「アノーラ」という映画が優勢になり始めている。(陽)


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