《記者コラム》パレスチナ問題解決のため=国連国際会議でブラジルも一役

国連構想による6月開催予定の「パレスチナ問題の平和的解決と2国家問題の解決策導入のための国際会議」で、ブラジルが第7作業部会の共同議長を務めることになったと20日付アジェンシア・ブラジルなど(1)(2)(3)が報じた。
伯国は以前からパレスチナ国の承認とパレスチナ人とイスラエル人の平和的共存を擁護する立場をとっている。今回はセネガルと共に、問題解決に向けた国際法の尊重促進をテーマとする第7作業部会を主導することになったという。
同会議は24年12月に採択された国連総会決議に基づくもので、6月17~20日に開催することが今月16日に国連から発表された(4)。会議は中東和平プロセスのための信頼できる交渉の場とされ、フランスとサウジアラビアが共同で議長国を務める。八つの作業部会の各議長国は両国が任命を調整した。
八つの作業部会や国際会議にはブレトンウッズ機関の他、プログラム、基金、専門機関、地域委員会を含む国連システムの全加盟国と代表が参加できる。ブレトンウッズ機関とは、国際通貨基金(IMF)と国際復興開発銀行(IBRD、通称世界銀行)のこと。両組織は第二次世界大戦中の1944年7月1~22日に米国ニューハンプシャー州ブレトンウッズで開かれた連合通貨金融会議で締結され、45年に発効した国際協定に基づいて創設された。
過激派組織ハマスによるイスラエル攻撃に端を発する抗争は、伯国が国連安全保障理事会議長国を務めていた2023年10月に勃発。以来、伯国を含む国連参加国が停戦や人道物資搬入などに向けた努力を続けてきたが、戦闘は止まず、今も多くの犠牲者が出ている。
また、国際社会は訪問団を送るなどして停戦に向けた動きを加速しているが、18日には、イスラエル軍と調整し、明確に識別できる車列でヨルダン川西岸地区を移動していた外交官グループにイスラエル軍が発砲。イタリアやスペイン、ベルギーが抗議する事態が起きた(5)。
20日にはイスラエル政府が「ハマスが提案を拒否した」として、停戦交渉のための代表団を帰国させると発表。イスラエル軍は交渉中にガザ北部と南部で大規模な地上侵攻を再開し、ハマスが反発するなど、停戦は見通せない(6)。21日には、日本や欧州連合(EU)、中国など20カ国以上の外交官からなる外交団が同地区の不許可地域に立ち入ったという理由でイスラエル軍から実弾の警告射撃を受け、パレスチナ自治政府が「国際法違反」と批判する事態も起きている(7)(8)。
パレスチナ国は約150カ国が承認しており、国連にオブザーバー加盟もしている。安全保障理事会で賛成票が得られなかったため、正式な加盟国ではない。今回会議の議長国フランスも未承認国だが、4月になって、今回の会議を機にパレスチナ承認を始めるとの意向を示した。また、イスラエルを国家として承認していない国にも同国承認を求めた。イスラエル未承認の国には、共に議長国を務めるサウジアラビアなどがある。
伯国政府はガザ地区での戦闘拡大を受け、同地区に残っていた伯国国籍者3人と親族のパレスチナ人9人(12人中6人は未成年者)の救出作業を行うと20日に発表。12人は21日に民間機でヨルダンを出発。22日にサンパウロに到着する予定だ(9)(10)。
イスラエル人(ユダヤ人)はアブラハムの正妻サラから生まれたイサクの子孫で、パレスチナ人を含むアラブ人は妾のハガルから生まれたイシュマエルの子孫とも言われる。6月の国際会議がガザ紛争と共に、数千年に及ぶ民族の争いに終止符を打つための布石となることを願ってやまない。(み)
(5)https://www.arabnews.jp/article/middle-east/article_148952/
(6)https://www.sankei.com/article/20250521-3Q3LNSEPWJPVNMXQM6MJZVF7UY/