《記者コラム》派手さなくも強さ感じさせた=アンチェロッティ采配

カルロ・アンチェロッティ新監督率いるブラジル代表(セレソン)が同監督就任2試合目で無事、来年のW杯進出を決めた。
カルロ氏の手腕に関しては初戦のエクアドル戦が0対0の引き分け。2戦目のパラグアイ戦が1対0での勝利と、スコアだけ見ると地味なものであり、その手腕に疑問符をつける人も少なくない。これをコラム子がどう見るか、語っていこうと思う。
ズバリ言うと、コラム子のこの2戦の評価はかなり高い。「レアル・マドリッドで何度も世界一を経験している」ということで4点や5点取っての圧勝を期待する人もいるとは思う。だが、そういう胸のすくような派手な勝ち方があっても、次でコロッと負けてしまっては意味がない。その意味でこの2試合での、堅実で危な気ない戦いぶりにコラム子はカルロ氏の、腰のしっかり座った安定感を見た。
かなりの批判が飛んだエクアドル戦も、コラム子は嫌な気がほとんどしなかった。あの日、確かに攻撃はつながらなかったが、点を奪われる気配が全く感じられなかった。レアル時代の教え子であるカゼミロが引き締めた中盤の守備に、初選出のディフェンダー、アレクサンドロがゴールエリアの球を危険な状況になる前に落ち着いて処理。相手のペナルティ・エリア内で動きを完全に殺し、ファウルの隙さえ与えていなかった。この安定感がジニス氏やドリヴァル氏の監督時にはなかった。
エクアドル戦では攻撃の仕掛けがほとんど見られなかったが、コラム子には「守備点検のためのカウンター・サッカーを意図的にやっているのではないか」と映った。
この勘はどうやら当たっていたようだ。パラグアイ戦では前戦欠場のラフィーニャ、途中出場だったマルチネッリを左右サイドにつけた攻撃で一転して攻めのサッカーを展開。相手にボールを奪わせないスピードで攻めた。パラグアイの守備がかなり堅くしっかりしていたが、それでも1点を奪った。
パラグアイの数少ないカウンターも前戦同様、カゼミロとアレクサンドロに加え、この日はブルーノ・ギマリャンエスの中盤での潰しも冴え、相手の攻撃を完全に骨抜きにしていた。
この2戦だけで今後の攻守の軸が決まったかのようにさえ映ったが、幸いにしてW杯進出を決めたことで、9月に行われる残りの2試合は消化試合となった。しかも相手は脱落決定済みのチリと脱落濃厚なボリビアだ。この2試合は控え選手主体の戦力見極めの試合となることが予想されるが、これにも期待したいところ。(陽)