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『短歌往来』海外在住歌人特集=異郷の地で響き合う三十一文字

2026年4月2日

表紙
表紙

 ながらみ書房が刊行する短歌専門誌『短歌往来』2026年2月号が発売された。今号では、【特集】越境する言葉―海外在住歌人の現在と題し、日本国外という異なる文化圏で日本語の定型詩を紡ぎ続ける歌人たちの「今」を、多角的な視点から浮き彫りにしている。

 本特集の柱となるエッセイでは、三つの論考がそれぞれの角度から「越境」を読み解く。英国在住の渡辺幸一氏は海外詠の大きな拠点となった同人歌誌『世界樹』の活動を振り返りつつ、その精神性を考察。「創刊号に滝友梨香が二十首出詠してくれて以来、陣内しのぶ、小池みさ子、小濃芳子、梅崎嘉明、多田邦治、阿部玲子ら多くのブラジル在住の歌人たちが作品を寄せてくれた」と記す。

 小塩卓哉氏は、移民の歴史の中で短歌がいかに日系人のアイデンティティーを支え、記憶を刻んできたかを丹念に追う。服部崇氏はフランスや台湾といった異なる言語圏に身を置く歌人たちの作品に触れ、言葉が海を越えることで生じる変容と普遍性を描き出した。

 特集の後半を彩るのは、世界各地で活動する15人の歌人による作品とエッセイだ。執筆者にはブラジルからの小池みさ子、小濃芳子両氏に加え、伊藤泰子、鵜沢梢、小城小枝子、工藤貴響、鈴木フラマン裕子、竹田伊波礼、中條喜美子、西田リーバウ望東子、ブラント弥生、美帆シボ、三宅教子、森上美恵子、渡辺幸一氏らが並ぶ。

 北米、欧州、南米など、それぞれの居住地の風土や生活感覚が反映された作品群からは、日本語を「母国語」として再発見する喜びや、異文化との摩擦の中で研ぎ澄まされる感性が鮮やかに伝わってくる。

 言葉が国境を軽やかに越え、世界のどこにいても五・七・五・七・七の調べが心の拠り所となる。そんな短歌の持つ強靭な生命力を再確認させてくれる、温かみと発見に満ちた一冊だ。



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