《記者コラム》子供への予防接種率改善=未接種児数のリスト脱出

15日、ブラジルが2023年に予防接種を受けていない児童数ランキングでワースト20のリスト脱出との記事が出た。
ブラジルの未接種児数増加(接種率低下)は2016年に始まり、新型コロナのパンデミックでより顕著になったが、非常事態宣言解除後も改善は遅れ、懸念されていた。
国連児童基金(ユニセフ)と世界保健機関(WHO)が発表した世界規模の研究によると、2021年のブラジルは未接種児童数が7番目に多かったが、23年は調査対象である16種のワクチンの内14種で接種率改善が進み、ワースト20から抜け出した。
一例はDTP(ジフテリアと破傷風、百日咳)で、1回目のワクチン未接種児は71万人が10・3万人に減少。3回目の接種を受けていない児童は84・6万人が25・7万人に減ったという。
ブラジルユニセフ保健部長ルシアナ・フェボ氏は、ブラジルでの小児予防接種率は回復傾向にあると強調。未接種の子供達を見つけ、迅速に接種を行うには、学校や社会援助参照センター(Cras)などの保健機関以外の機関も使うことが必要とも主張した。
国内の専門家も、接種率改善は、命を救い、重症化を防ぐという予防接種の効果を保証するもので、政府や医学関係者、保護者達の努力の実と喜んでいる。
一例はニジア・トリンダーデ保健相で、「16年以降の予防接種率低下は天然痘根絶やポリオウイルスの蔓延根絶などの重要な成果を得た後に国家予防接種計画(PNI)が直面した大きなリスクだったが、科学や統一医療保健システム(SUS)でのワクチン接種への信頼復活でシナリオを逆転できた」とし、予防接種児増加の報道を「喜びと希望」をもって受け取ったと発言。子連れ家族によるワクチン接種記録更新への取り組みも強調した。
ブラジル免疫学会のフラヴィア・ブラヴォ理事は、接種率向上は健康状態の改善と予防可能な感染症防止という即刻かつ直接的な結果を生むと説明。ブラジル小児科学会免疫部門のメリッサ・パルミエリ氏は、接種率向上は接種を受けられない子供達を守る鍵とも強調した。
ただ、予防接種率改善や未接種児減少は世界的な傾向ではなく、ブラジル保健省はパリ五輪への参加者や観戦者達に予防接種勧告を出している。
知人は5月末に足を骨折後、血栓症で入院。退院後も血栓溶解剤を半年間飲む必要がある。コラム子は手術後数日間、血栓予防のための注射を受けたが、できてしまった血栓溶解には半年もかかるのかと痛感。新型コロナでも、予防接種を受けた人は重症例や死亡例が少なく、ワクチンで感染者や死者が減ることを数字の上でも示した。
風水害や労働災害も事前の対策が被害軽減の鍵だが、病気はなおさらだ。近年の麻疹大流行は、感染拡大や不必要な死亡を防ぐために必要な予防接種率95%を大幅に割り込んだ結果だ。過去5年間の麻疹流行国103カ国には世界の乳児の75%が住んでいるが、これらの国の予防接種率は80%以下。接種率が高い91カ国では流行は起きていないという。(み)