《記者コラム》映画や音楽より、ブラジルを知るなら「ノヴェーラ」

23日付のG1サイトで興味深い記事を見つけた。それはグローボ局開局60周年を記念した「グローボ60年のテレノヴェーラ・ベスト60」というものだ。文化的な記録を収集する趣味のあるコラム子にとっては嬉しいものだった。
テレノヴェーラというのは、わかりやすく言えば、毎日決まった時間帯に放送しているドラマのことで、ブラジルのテレビドラマではこれが当たり前の放送形態だ。いわば、NHKの朝の連続テレビ小説を夕方から夜の時間帯に毎日やっているものと思っていただきたい。
上位10作のランキングはこのような感じだ。①ヴァーレ・トゥード(1988)②アヴェニーダ・ブラジル(2012)③ロッケ・サンテイロ(1985)④ア・ファヴォリタ(2008)⑤オ・クローネ(2001)⑥ア・プロッシマ・ヴィチマ(1995)⑦オ・ベン・アマード(1973)⑧チエッタ(1989)⑨ラソス・デ・ファミリア(2000)⑩オ・レイ・ド・ガド(1996)。
上位3つは妥当も妥当だ。現代ブラジル社会でも使われるフレーズ「誰がオデッテ・ロイトマンを殺したか」を生んだ「ヴァーレ・トゥード」は現在まさにリメイク版が放送中で1位。ここ10数年では最大ヒットで国際放映もされた「アヴェニーダ・ブラジル」が2位。コラム子のブラジル移住後の作品でもあるだけに個人的にも嬉しい。3位の「ロッケ・サンテイロ」は軍事政権の検閲に遭い、同政権が終わった後に放映された不屈のドラマとして伝説になっている。
コラム子の印象では国際的名女優ソニア・ブラガの代表作「ダンシング・デイズ(12位・1979年)」、名悪女ナザレーで今日も有名な「セニョーラ・ド・デスチーノ(14位・2004年)」、夕方のコメディの時間帯の名作「ショコラッテ・コン・ピメンタ(16位・2003年)」、異色のバンパイア・ドラマ「ヴァンプ(20位・1991年)」などは今日でも有名なのでベストテンに入ってても良かったように思う。
ブラジルの場合、音楽の趣向が多様化しきっていて世間共通で話題にしやすいものがなく、映画でも今年のオスカー受賞作「アイム・スティル・ヒア」のような社会現象的な成功作は例外中の例外で国産の話題作など普段ほとんどない。そんな状況の中、ノヴェーラの存在はサッカーについで人々の話題になりやすい。誇張でなく、今のブラジルを知りたければノヴェーラを見ればいい。そう言える存在だ。
ただ、ノヴェーラには膨大な放送量という問題がある。1話あたりの放送時間は1時間ほどだが、それが100〜200話ある。これではどんなにサブスクによる配信が普通になった現在でも消化が大変。その意味でもどかしくもある存在でもある。(陽)