《記者コラム》カンヌ映画祭で快挙!=さらなるオスカーへ向け第一歩

以前当コラムで書いたことが早くも現実化しそうで正直驚いている。映画「アイム・スティル・ヒア」がブラジル史上初となるオスカー(アカデミー賞)を受賞した際、「今回(国際長編映画賞)以上の結果を今後求めるならば、ブラジル映画界はもっと早い段階から準備をしたほうが良い」と書いたのだが、先日行われたカンヌ映画祭で「シークレット・エージェント」が重要部門の受賞を果たし、さらなるオスカー受賞へ向けた機運が早くも高まっているのだ。
「アイム・スティル・ヒア」の場合、ブラジル映画界がオスカー受賞を本気で意識したのは1月5日のゴールデン・グローブでヒロイン、フェルナンダ・トーレスが主演女優賞を受賞した時からだった。仮にもう少し早くからキャンペーンの準備をしていれば、ノミネートは3部門(作品賞、主演女優賞、国際長編映画賞)だけでなく、さらに増えていただろう。
実際、他の有力候補はもっと早い段階からオスカーに向けて準備をしていた。作品賞受賞の「アノーラ」や最多ノミネートだった「エミリア・ペレス」は昨年5月のカンヌ映画祭で好成績を収めたところから準備を始め、オスカー争いを序盤から有利にしていた。「アイム・スティル・ヒアもこれらの作品と同じ準備が出来ていたら」と少し悔しい思いをした。
そんなコラム子の思いが通じたのか、先週行われた今年のカンヌ映画祭でブラジル映画「シークレット・エージェント」が監督賞と主演男優賞の2部門受賞という快挙をいきなり成し遂げた。
もう、これは早速、次のオスカーに向けて動かない手はない。カンヌで、しかも監督賞と主演男優賞という重要部門の受賞となると、ただでさえ映画関係者たちは一目置く。そこに記憶にも新しい今年のオスカーでの「アイム・スティル・ヒア」の快進撃のイメージが加われば、「ブラジル映画は勢いがあるな」との好印象とともに作品の広がりが後押しされるだろう。
さらに「シークレット・エージェント」主演のヴァギネル・モウラは米国ドラマ「ドープ・シーフ」の演技でエミー賞のノミネートが有力視されてもいるから、これも後押しの材料に十分なりうる。
加えて、「シークレット・エージェント」の北米配給がネオン社に決まったのも非常に大きい。同社は2020年の韓国映画「パラサイト」、そして今年の「アノーラ」と2作のオスカー作品賞受賞映画を輩出した会社だ。
唯一気になるところは、このネオン社がカンヌ最大賞のパルムドール作品、イラン映画の「イット・ワズ・ジャスト・アクシデント」、2位相当のグランプリに輝いたノルウェー映画の「センチメンタル・ヴァリュー」の配給も手がけていること。来年のオスカーがブラジルにとって輝かしいものになるかは同社の判断にかかっている。(陽)