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《記者コラム》常日頃から事故防止策を=転ばぬ先の杖ではないが

2025年6月5日

転倒事故で寝たきりになった方(介護のコツに関する日本語サイトの記事の一部)
転倒事故で寝たきりになった方(介護のコツに関する日本語サイトの記事の一部)

 5月25日、初めて訪れた日本人会の会館で思いがけない事故が起きた。イベント会場だった会館の建物は敷地の少し高い場所にあり、外部入り口となる駐車場やバスケットボールコートからはスロープや階段を使って出入りする必要があった。そこへ80歳近いある婦人が階段を使って会館から駐車場に行こうとした際に足を踏み外し、頭部を強打したのだ。
 一時的に気を失った婦人を座らせ、救急車が来るのを待つこと1時間半。目を覚ましたものの、鼻血を流し、背中と手首の痛みを訴える姿に驚いた周囲の人達が、警察車両で病院に運べないのかと訊いたが、警察車両に乗り込ませるのが困難な状態の上、身体を固定できるタイプの担架がないため、でこぼこ道を走れば本人が苦しむと言われ、氷で患部を冷やしたり、傘で日陰を作ったりしながらひたすら救急車を待つしかなかった。
 最終的には、救急車が来て、医療保険が使える病院に運んでくれたが、その後の検査で頭部に血の塊があることや手首の骨折が判明。医療現場で働いたこともある友人は、鼻血は頭蓋骨の中の圧力を逃がすためのものだったのかと話していた。怪我をした婦人は一旦退院したが、その後も頭痛を訴え、病院で再検査をしたところ出血が確認されたため入院するなど、心配な状況が続いている。
 医療の専門家でもないため、治療や介護は家族や専門家に委ねるしかないが、こういう時に思い出すのは、高齢者向けのデイサービスを手伝っていた時に聞いた、転倒事故は骨折や寝たきりの原因となり得るし、直接・間接に命の危険も招き得るという話だ。
 高齢者の転倒事故は家の中や家の周囲で起きることが多く、階段やトイレの手すり設置などの事故防止策が必要だ。この点はイベントなどで大勢の人が集まる場所も同じはずだし、そのような場所では、急病人やけが人を運ぶための担架や初期対応用の医薬品、医療従事者、最寄りの医療機関への搬送手段などの確保も必要だろう。
 前述の事故が起きた階段は壁側にしか手すりがなかった。慣れない場所での移動に、壁も手すりもない箇所で足を踏み外したため、頭から倒れる形になり、頭部を強打するという不幸が重なった。会館側には既に、手すり設置などの事故防止策を求める声が届いているはずだ。
 コラム子は数年前から、階段やトイレ、シャワーボックスへの手すりの設置や、入浴時に座るための椅子購入などで事故防止に努めている。筋肉量を維持、増強するための運動や散歩による転倒防止策といった記事も読んでいる。
 読者の方の中には「私には縁がない」と思っている方がおられるかもしれないが、高齢者や幼少児が近くにいる方には特に、自宅や周囲での事故防止策の徹底や、体力、筋肉の増強を含めた事故回避策の採用をお願いしたい。
 ただ、失敗しないようにしっかり準備しておくという意味の「転ばぬ先の杖」は、相手を案じるあまり、手を出し過ぎて失敗する例もあり得る。転倒を嫌って段差などをなくそうとした結果、小さな段差の怖さや段差を避ける必要を考えなくなり、かえって事故に遭う可能性が増すこともある。
 事故防止策や回避策、事故発生時の重大化防止策はその人の身体能力や場所などによって異なり得るが、環境整備や運動、適切な靴選び、日頃の生活習慣などでバリア(生活障害物)を減らすと共に、声掛けを増やすなど、皆で、安全で快適な暮らしを心掛けたい。(み)
*(参考記事)高齢者による転倒事故やその防止策などに関する日本語のサイト(1)(2)(3)(4)(5)(6)

(1)https://solasto-kaigo.com/soramameplus/kaigo-health/1423

(2)https://medical.francebed.co.jp/special/column/62_elderly_fall.php

(3)https://jsite.mhlw.go.jp/kumamoto-roudoukyoku/content/contents/000537315.pdf

(4)https://www.ndsoft.jp/column/319034

(5)https://tennenseikatsu.jp/_ct/17717910

(6)https://tennenseikatsu.jp/_ct/17717912


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