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《記者コラム》バガッソから新包装材=環境に優しく、高性能

2025年4月17日

持続可能な新包装材として期待がかかるクライオゲル(© CNPEM/Divulgação)
持続可能な新包装材として期待がかかるクライオゲル(© CNPEM/Divulgação)

 13日付アジェンシア・ブラジル(1)で、バガッソ(サトウキビの搾りかす)と石炭やコールタールなどが不完全燃焼する時にできるブラックカーボンで、帯電防止化機能も持つ持続可能な新包装材が開発されたという記事を見た。
 このところ、詐欺や殺人、関税戦争、気候温暖化に自然災害甚大化など、悲観的なニュースが続いていたため、持続可能性などに関連した肯定的な内容に少し愁眉が開いた。
 新包装材は凍結乾燥で作られる多孔性のゲル状物質(クライオゲル)だ。電気誘導性があり、静電気放電による損傷を軽減できるなど、従来のプラスチック製包装材よりも荷の安全性が高まる。ICチップや半導体、その他の電子部品など繊細な取り扱いが必要な電子デバイスの輸送用包装材としての活用が期待されている。
 ICチップや半導体はコンピューターや携帯電話、テレビ、自動車など高価な製品に使われる。その安全性を保証し、環境にも優しいクライオゲルの商品は需要が拡大すると思われる。
 環境汚染が懸念されるプラスチックに代わる素材の開発は産業界の課題の一つだ。今回発表された製品は、サンパウロ州研究支援財団(Fapesp)の資金提供を受け、国立エネルギー・材料研究センター(CNPEM)が開発したもので、雑誌『高度な持続可能システム(Advanced Sustainable Systems)』に掲載された。
 研究者達は、プラスチック素材に代わり、汚染が少なく、繊細な電子機器の輸送時にも使える、持続可能で高性能な包装材の提供を目指す中で、バガッソとブラックカーボンを使った素材に行き着いたという。この製品は類似品がなく、特許申請も済んでいる。CNPEMは、イノベーションアドバイザリーを通じ、工業規模の生産に投資する意志のある企業との提携を模索しているという。
 CNPEMの研究者達が使った材料はバガッソだが、トウモロコシの茎やユーカリのチップなどの農産業廃棄物から得たセルロースも使えるという。
 ブラックカーボンの方は石炭やディーゼル油などの化石燃料の不完全燃焼時や森林火災、バイオマス燃料の燃焼時に生じる、すす粒子、元素状炭素とも呼ばれる大気汚染物質だが、電子・電気材料に誘電性を持たせたり、紫外線を吸収させるような機能を持たせることもできるという。また、昔から黒色顔料として塗料や印刷インキ、墨汁に使われており、食品着色料、化粧品への添加剤にも用いられている。
 クライオゲルは、植物の細胞壁や繊維の主成分となる食物繊維、炭水化物のセルロースとブラックカーボンの組み合わせで出来ている。軽量で多孔質の上、高い機械的耐性と延焼防止性質があるという。また、ブラックカーボンが低濃度だと静電気の放散は緩やかだが、10%以上だと効率的な導体となり、非常に敏感な電子機器の保護などの高度な用途にも使えるという。
 この環境に優しく、高性能な新包装材がいつ商品化され、市場に参入するかは不明だが、近年は商品に持続可能性や環境保護、環境保全性を求める声も強いことから、意外と早く商品化されるのではと期待している。 (み)

(1)https://agenciabrasil.ebc.com.br/meio-ambiente/noticia/2025-04/bagaco-de-cana-vira-embalagem-ecologica-para-equipamentos-eletronicos


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